2025/05/22
抹茶と実芭蕉の間
Matcha de Nanzan et Banane – L’Intervalle
Titre:枯山水のあわいにて
このお菓子は、ひとつの庭をイメージして生まれました。
うちの父は、庭が好きな人でした。
私が同じパティシエになった今も、実家は日本家屋のまま。
その影響か、子どもの頃から自然と庭という空間に惹かれるようになり、
大人になってからは、京都の名庭を巡るようになりました。
四間道の奥の庭も京都の庭園をイメージしお願いをしました。
音のない水が流れ、白砂が石を撫でる。枯山水の庭にいると、
不思議と心の奥が静かになっていきます。
その“静けさ”を、甘味の中に宿せないか。
そんな想いから、この菓子の構成が始まりました。
使ったのは、南山抹茶。異なる濃度でふたつの層を仕立てることで、
抹茶の“濃淡”がまるで枯山水の風景を描くように、
ゆっくりと味わいを広げていきます。
重ねた三種のクリームは、陽の光、雲の影、そして朝露をイメージしました。
甘さ、苦み、香りがそれぞれに異なる“気配”を持ち、静かに、でも確かに響き合います。
そこに加えたのが、実芭蕉——バナナという果実です。南国の生命力を秘めながら、
やさしい香りと輪郭を、この小さな庭に添えてくれる。
そのバランスが、「ま」と呼ばれる空間の感覚をつくっていきます。
味が、形が、香りが、「ひとときの風景」をつくり出す。
それは、静けさであり、豊かさであり、
そして、ほんの少しだけ、心を遊ばせる時間でもあります。
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抹茶と実芭蕉の間
Matcha de Nanzan et Banane – L’Intervalle
枯山水のあわいにて
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