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時の澱(おり)

2025/05/24

時の澱(おり)
Titre:Le dépôt du temps – 静けさの中に沈むもの

この庭を見ていると、
言葉では追いつけない静けさと、余白が、静かに流れているのを感じる。

まるで時間が、ここでは別のリズムで歩いているみたいに。

石畳のあいだから、草が小さく顔を出し、
苔むした縁には、陽をまとった緑がゆれている。

午前と午後の境い目を知らせるようなやわらかな光が、
この場所全体に、そっと布をかけるように降り注いでいた。

この庭は、biquetteの菓子たちとよく似ている。
人の手で丁寧に整えられながら、
自然の呼吸を、決して押し殺さずに残しているところ。

「整える」と「ゆだねる」のあいだ。
そのあわいに宿る美しさ。

人の美意識と、自然の自由さが、
無言のまま、共存している風景。

もしこの庭に名前をつけるなら——
時の澱(おり)」と、私は呼びたい。

澱とは、時間のなかに沈んでいくもの。
けれど、それは消えてなくなるわけじゃない。

ある日、ふとした拍子に、また静かに浮かび上がる。

biquetteのお菓子たちも、きっとそう。
ひとつひとつがこの庭の風景のように、
誰かの心の中に沈んでいき、
時間を超えて、ある日ふと思い出される。

この庭は、ただ美しい場所ではなく、
記憶が静かに棲みつく“澱”の場所。

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時の澱(おり)
Le dépôt du temps – 静けさの中に沈biquette四間道店の庭にて、お待ちしております。