2025/06/03
Myrtille et cassis de Saison, maturation blanche
青と白、時間の落差という調和
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毎年、6月の声を聞くころになると、
ブルーベリーのタルトのことを思い出す。
あの人は今年も楽しみにしてくれているだろうか。
そんな小さな問いかけが、心の奥に静かに灯る。
国産のブルーベリーは、酸味がとてもやわらかくて、
どこか人懐っこい。主張しすぎず、けれど確かな存在感がある。
この果実に、どんな“言葉”を添えようか。そう考えたとき、思いがけず浮かんだのは、
「熟成」という響きだった。
若さと老成。
摘みたてのきらめきと、時を経たまろみ、
相反するはずのふたつが出会ったら、
どんな風景が立ち上がるだろう?
添えたのは、クロテッドクリーム、
ミルクの輪郭がそのまま残るような、牧歌的で、厚みのある白。
初めは、ためらいもあった。
繊細な果実がその白に埋もれてしまわないかと。でも、そっと重ねてみたら、
ブルーベリーとカシスの鮮やかな酸味が、その熟成された白に抱かれて、
思いもよらぬ“深さ”が生まれた。
きっとそれは、
時間という見えないスパイスが引き出してくれた味。
誰かの心に、ひとつの静かな風景を残せたら
そんな想いで焼いた、初夏のタルト。
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旬のミルティーユとカシス、白い熟成
Myrtille et cassis de Saison, maturation blanche
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