2025/06/06
Blancheur muette et lumière suspendue
白壁と光、声にならない余白
Titre : 四間道という街の静けさに寄り添って
四間道を歩いていると、不思議な感覚に包まれる
時間が巻き戻るわけでも、止まるわけでもない、
ただ、“ほんの少しずれる”
それはきっと、目に見えない余白のせい。
建物と建物のあいだに流れる風や、
路地にしみ込んだ足音、
誰も語らない記憶が、空気のように溶け込んでいる。
とりわけ、白い壁、
日中には光を跳ね返し、夜には静けさを吸い込む。
誰のものでもないはずなのに、
まるで誰かの“記憶そのもの”のように、そこに在る。
瓦屋根はゆるやかに重なり、小さな庇が空との距離をちぢめる。
そして、ぶらさがった裸電球。
まだ灯っていないのに、なぜだか“灯り”として印象に残る。
それは、光というよりも“気配”なのかもしれない。
四間道という場所は、
派手さや装飾ではなく、“静かさ”によって語られる。
物語があるのではなく、物語が染み込んでいる。
人の暮らしと記憶の蓄積が、
この白壁のひびや瓦の重なりのなかに、そっと息づいている。
この街には、語りすぎない美しさがある。
誰かの心には残るけれど、名前をつけられないような風景。
記念写真には映らないけれど、
ふとしたとき、記憶の奥で灯るような風景。
——ここに立っていると、
自分の感覚がほんの少し“柔らかくなる”のを感じる。
季節の変わり目に、ひとりで歩くのもいい。
静かな朝に、誰かと並んで歩くのもいい。
この場所はきっと、
語らないことの中に、
いちばん深い言葉を隠している。
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白壁と光、声にならない余白
Blancheur muette et lumière suspendue
四間道にて