2025/06/18
Approche douce
四間道とサロンをつなぐ風景
thème:静けさが、店先に流れている
古い石畳を歩いてゆくと、ふいに光が変わる。
四間道の小径をぬけて、ゆるやかに折れた角、
そこに、やわらかな緑の影が揺れている。
夏を知らせるように茂った葉たちと、
静かに佇むアンティークの柵。
そこを通り抜ける風は、どこか懐かしく、
けれど確かに新しい一日へと導いてくれる。
扉の向こうには、菓子と香りのサロン。
けれど、その少し手前のこの空間こそが、
私にとっては “始まりの味” だった。
朝の光がやわらかく差しこむとき、
午後の影がゆっくりと伸びるとき、
ここに立つたび、空気にひとつ深呼吸をさせられる。
石と緑、そして古い木の扉。
装飾のないその佇まいに、
菓子たちの輪郭がそっと重なっていく。
この場所は、サロンの玄関ではない。
記憶の中で、菓子と結びつく“風景の一部”なのだと思う。
ふとした瞬間に、季節の気配を運んでくれるような。
小さな変化を、優しく見守ってくれるような。
「アプローチ」という言葉に込めたのは、
味や香りに近づいていくための、心の準備。
その時間もまた、私たちのおもてなしのひとつ。
静けさが連れてくる、物語の入り口にて。